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2次元感想ブログ

9割エロゲについて思ったことを書く薄っぺらい感想ブログです。

魔女魔少魔法魔 感想

 

 ずっと摂取したかった文字を久しぶりに摂取できたような気がしました。

 

 鬱々とした世界観に登場人物の性格はほぼ皆どこか後ろ暗く、所々ネガティブな様子が漂うテキストと非常にダウナーな雰囲気に、主人公とのろいちゃんの漫才テイストのポップな掛け合いがマッチすることで軽快なテンポを生み出しており、楽しく最後まで読み進めることができました。主人公とのろいちゃんの会話も基本夫婦漫才みたいな様子で展開されるけど、ふとその出来事についてや人間そのものに対する本質を突いた芯の食った針を刺してくるから油断ならないんですよね。

 で、この作品は人間の幸福、どうすれば人間は幸せになれるのかについて説いています。僕は、現実の人間の本質は醜い、ファンタジーの人間のように美しくはない、皆どこか壊れている、そんな人間の本質について非情に描いている点が、この作品の好きな理由です。オブラートにファンタジックに包まずに人間の本質を捉えた文字は、どれも非常に深く考えさせられるので良いです。現実では体験できないことを創作物を通じて疑似体験することも創作物を楽しむ一つの動機ですけど、現実をありありと突きつけてこれからの人生の糧にするのもまた創作物の一つの楽しみ方だと思います。そういう物にしばらく触れていなかったので、非常に楽しかったです。

 

 主人公たちは魔法を使って依頼者たちの願いを叶えていくわけですが、主人公たちが使う魔法はどれも直接依頼者を幸せにするのではなく依頼者の肩を押す程度です。この作品で登場する願いはどれも本来自分たちで対処すべき問題ですが、それを主人公たちに丸投げしているだけに過ぎません。主人公たちはそれを直接解決はせず、依頼者本人のみで解決させようとします。願い……問題を自分たちで解決させるところにリアリスティックさがあります。問題を他人が解決したら、それによって生じる責任は誰が負うのか、結局は自分で何とかして自分で責任を負うしかありません。

 

 今作での魔法を、あくまで現実で起こせることの間に生じる面倒くさい手順のあれこれをスキップする程度の奇跡にしていることで、ファンタジックな概念を上手に現実に落とし込んでいます。現実を、魔法という別の視点から見つめることで捉えなおす構造が面白い点だと思います。

 

 現実は綺麗事で成り立っている側面なんて爪の先ほどしか無くほとんどが理不尽の連続で。そんな世界でうまく自分の中で折衷案をだして折り合いをつけてしがみついてるだけにすぎません。本来触れてはいけないタブーな事、それは触れたら非難される事にも切り込んでいきます。もしかしたらそれは僕みたいな弱い人間だから共感できるだけで、普通の人だったら理解できないかもしれませんが。そういう意味では、僕とは違う感性の人の感想も見てみたいです。

 

 色々脱線しましたが、まず世界の仕組みとして現実は理不尽の連続であり、そんな世界で何かを願う(幸せになろうとする)のは他の誰かを押しのける、つまり他の誰かが理不尽な目に遭うことになります。じゃあそれを恐れて自分が幸せになるのを諦めるのかというとそうではなく、自分のために誰かを蹴落としてよいのです。しかし、幸せになるために誰かを理不尽な目に遭わせた責任は自分で背負わなければなりません、それが責任だから。だから自分自身の手で願いを叶えなければいけない。

 

 このゲーム、僕は鬱ゲーだとは思っていません。あくまで淡々と誇張に現実を述べているだけで、最後は希望まで説いてくれます。主人公の最後の台詞、幸せの定義なんてまさにそれです。そして最後のいのりちゃんの願い、希望に満ちてはいませんが、どうしようもない世界でそれでも生きていこうと思えるだけの活力が詰まっていませんか?